こんにちは!
井戸おやじこと、アサノ大成基礎エンジニアリングの杉山明です。
東京ではすでに暑い日差しが
注いでいることとは思いますが、
ここ札幌では時に寒いくらいの日もあるのですが、
徐々に温かい日差しも増えており、
北海道が一番にぎわう、ホテルの予約が取れない
夏本番を迎えようとしています。
【取れたての夏の塩水ウニ(雲丹)はおいしいですよ!】
ところで最近は水処理技術(膜ろ過)の進歩によって、
水質の悪い水でも濾過できるようになったので、
処理前の水(原水)の水質にこだわりが少なく
なってきたようですが、処理設備の維持管理上の
メンテナンスも考えれば、やはり原水の水質が良い
に越したことはありません。
そこで今回は「地下水の水質」の話題を
取り上げてみたいと思います。
地下水の水質に良い水と悪い水があるのは、
場所による違いもありますが、
同じ場所でも深さによって違いがあります。
その違いは地層の堆積環境や
地下水の供給源の違いが主な原因です。
地下水は平野部などでは、
砂や砂礫といった地層の中に
層状に帯水しており、
下の模式図に示すように
何枚かの帯水層を形成しています。
一番上の第1帯水層は大気と接する
不圧(自由)地下水となっており、
その下の粘土層で隔てられた
第2帯水層は上の粘土層で加圧されて、
被圧地下水となっています。
以下、何枚かの帯水層が繰り返し分布
する帯水層構造を形成しています。
第1帯水層は地表に近く、
降水が直接浸透するので、
場所によっては地表からの
汚染が進んでいることも多く、
水道水源として利用する際は、
汚染されやすい第1帯水層をなるべく
避けて、第2帯水層以深から採水する
ようにすることが多いです。
粘土層で区切られている各帯水層は
それぞれ水質が異なることも多く、
水質の良い水、悪い水に分けられます。
したがって、
深度の異なる井戸の水質を比較して、
水質の良い帯水層から採水する井戸
を掘るようにしています。
しかし、同じ帯水層の中であれば、
同じ水質かというと
必ずしもそうならないので困ります。
過去に経験した浅井戸の事例を紹介します。
次の図はその時の地盤断面図です。
[地盤断面図の一例]
この内、地下水は上図の3層、
As層(砂層)、Ag1層(砂礫層)、
Ag2層(砂礫層)に存在しています。
この3層の間には粘土層を挟んでいないので、
一枚の帯水層とみなすこともできます。
この地盤で掘削した穴の中に
電気検層をかけて、
地層の比抵抗を測定すると、
Ag1層とAg2層は同じ比抵抗を示し、
ひとつの帯水層に区分されました。
ここで、
各層別に揚水試験を実施したところ、
最下部のAg2層は
水量は一番多かったのですが、
鉄分の多い水質でした。
この層はN値も大きく締った砂礫層であり、
沖積世の基底礫層に相当し、
周辺への広がりも大きいことがわかりました。
一方、As層とAg1層は、
水量がAg2層に比べると少なかったのですが、
鉄分はほとんどなく、極めて良好な水質でした。
どうもAg2層の堆積した時代と
As・Ag1層の堆積した時代の
間には時間差があり、両層の層境は
地質学でいう不整合の関係にあるようで、
Ag2層の上面10cmほどの薄い層は、
一度、地上に現れて風化作用を受け、
粘土化しているように思えます。
As層とAg1層は、
同時代の堆積物で、旧河道沿いに礫が多く、
河道から離れたところに
砂が堆積したようです。
Ag2層の上面には
上位のAs・Ag1層とを隔てる
明瞭な粘土層はないものの、
前述した薄い粘土化層によって、
両者は水質からみても違う帯水層を形成しており、
細かくみると水の流れも異なっているようです。
一般的には、帯水層毎に水が区分され、
水位(水圧)、水質、水量が違っている
と考えられますが、水みち的流れも含め、
帯水層を区分する時には注意が必要です。
また、汲み上げ量によっても
地下水の影響範囲が異なることから、
大規模揚水では、
遠くの地下水を引っ張ってくるので、
帯水層を区切る粘土層の広がりがない場合には、
当然、上と下の帯水層はつながってしまいます。
自然界はなかなか複雑で、
モデル化した教科書的な説明では
判断を誤ることもあります。
柔軟な頭が大切です。
もっともおやじは頭が柔軟すぎて、
何かあるとすぐにススキノに逃げてしまうと、
お叱りを頂くことも多いので難しいところですが。
今回もお読みいただきありがとうございました。
by井戸おやじでした。
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